8月18日(月)

出発時間まで時間があるため、
駅の待合室に入ってから、何時間か睡眠をとった。
実際、外に比べてずっと暖かい。
やはり室内はよく眠れるものだ。

ただ、ずっと寝てた訳ではなく、
途中、起きだして朝の青森港を探索したりした。
そういや、前日の夜に青森港のベンチに
イヤホンのスポンジプラグを落としたので探しに行ったが、
結局見つからなかった。まぁ、安物だから別にいいが。
それにしても、下から見た朝の青森ベイブリッジはとてもきれいだった。
その姿は、昨夜見たときの不気味さとは全く違うものであった。
八甲田丸も朝の光を浴びてその堂々たる姿を私に見せてくれた。

さて、青森での長い夜も終わってようやく念願の北海道上陸へ、、、
待合室の立ち食いうどんで腹をこなし、それから改札で新しい日付を
青春18切符に押してもらい、快速「海峡1号」へと乗り込んだ。

7時29分 青森駅発

海峡1号の中で私はすぐに眠りに就いた。
実際、昨夜は寒さのせいで殆ど寝てなかったのだ。
青函トンネル内での記憶は全く無く、
北海道側の木古内駅でちょっと起きた記憶があるだけだった。
という訳で、函館に着くまでの約2時間半は
そのときの私にとってはアッという間であった。

9時53分 函館駅着

とうとう、念願の北海道に上陸。
まずは、北海道の玄関口として知られる函館だ。
駅舎はちょっと古めの感じだが、流石にここら辺では一番大きい駅である。
駅舎内には食堂が何個所かあって、ラーメンのお店もあったが、
どうせ期待も持てないので、そこでは食べないことにした。
それよりも、先日図書館の電話帳で調べた「博多ラーメン 孔雀」
に興味を持っていて、そこで食事をとろうと思っていた。
実際、北海道版のタウンページに載っていたラーメン屋で
「博多ラーメン」と銘打っていたのはここだけであったのだ。
(九州ラーメンとか豚骨ラーメンとか銘打っていたお店は他にもあったが)
場所は函館市桔梗、、、幸い桔梗駅という駅に近いようなので、行ってみることにした。
まずは、函館駅をちょっと出たところにある電話ボックスでお店に電話をかけてみた。
しかし、誰も出てこない、、、、
おかしいなぁと思いながらも、まぁ折角だから行ってみようということで、
電車に乗り込んで、函館の次の次の駅「桔梗」に向かった。

10時23分 函館駅発

桔梗に行くつもりであったが、実際電車の中では迷いもあった。
何故なら、もし桔梗で途中下車をしたら、
次に来る電車まで2時間ものロスがあるからだ。
このままずっと乗って森駅まで行こうか、、、とも考えたが、
折角だから寄ってみようという気の方が強かったので、
桔梗で降りることにした。

10時35分 桔梗(ききょう)駅着

桔梗、、、函館市の郊外といった感じの場所である。
そのときは知らなかったが、実は桔梗といえばGLAYの
TERUやTAKUROの出身地でもあるのだ。
但し、駅自体は予想通り何も無い田舎の駅であった。
無人駅でないだけ、まだマシな方かもしれない。
駅に降りるとトイレに行って(何とボットンだった!)、改札を出た。

さて、改札を出て、さぁ「孔雀」を探すか、、、と思いきや、
何と駅のすぐ真ん前に例の「博多ラーメン 孔雀」があるではないか。
探すのに苦労するかと思っていただけに、すぐに見つかって嬉しかった。
しかし、その喜びはすぐに絶望へと変わってしまったのである。
何と、その日(月曜)は定休日だったのだ!
しまったぁ、、、、どうりで函館駅で電話をかけたとき、誰も出なかった訳だ。
何でこのことに早く気づかなかったんだ、、、
それよりも週に1回の定休日に何でぶつかってしまったんだ!
たった7分の1の確率なのに、、、ツイてねぇなぁ。
まだ、次の電車がすぐ来るというなら分かる。
しかし、閉まっているラーメン屋のために2時間も
ムダにしたことを考えると焦りの気持ちを抑えることは出来なかった。

しかし、焦っても仕方がないので、また駅に戻ってベンチに腰掛けた。
そして、ラーメン屋の住所やTELを図書館のタウンページで調べて
メモってあるノートを見ることにした、、、、
ところが、無い、無い無い、、、、折角苦労して書いたあのノートがぁぁ。
孔雀の定休日に続いて、私は何とダブルパンチを食らってしまったのだ。
どこに置き忘れたのだろう?、、、、私は記憶の糸を手繰り寄せた。
そして、思い当たる節は2つ。
一つは電車の中、そしてもう一つは函館駅の電話ボックスの中である。
まずは一つ目の可能性を当って、駅の人に電車に連絡してもらうように言ってみた。
だが、まだその電車は終点の森駅には
到着してないので、何とも言えないとのことだった。
もし、あったら取っておくように連絡するとのことだったので、
もう一つの可能性を当たるために、函館駅へと戻ることにした、、、

11時13分 桔梗駅発

11時24分 函館駅着

情けないことに、再び函館駅に戻ってくるハメになってしまった。
しかし、望みをかけて例の電話ボックスへと行ってみることにした、、、
すると、黄緑色の公衆電話の上に見覚えのあるルーズリーフファイルが
雑作なく置かれていた、、、そう、探していた例のノートであった。
その日の私はがっかりしっぱなしであったが、その時ばかりは喜んだ、、、
と同時にホッとした。これで、これから以降の旅でも
図書館で苦労して調べたラーメン屋に行くことが出来るからだ。

さて、ノートも見つかったことだし、気を取り直して北へ向かって出発するか、、、
と思ったが、まだ出発まで時間があったので、
ちょっと駅の周りをうろちょろすることにした。
とはいっても、市電を見て街の雰囲気を堪能したくらいだったが。

12時16分 函館駅発

12時38分 七飯(ななえ)駅着

前の電車だったら、一気に森駅まで行ってくれるのだが、
この電車はこの七飯という駅が終点であるようだった。
無人駅ではないものの、何というかかなり小さな駅で、
駅構内にちっぽけなキヨスクがあるだけだった。
そこで適当にパンなんぞを買って、腹の足しにした。
しかし、それにしても寒い。
地元のおばちゃん達が、今日は寒いですねぇと話していたが、
さすがの北海道人も、夏のこの時期でこの温度だと寒いと感じるようだ。

13時31分 七飯駅発

電車の中はさすがにガラガラ。
途中、大沼公園の側を通った。
ただ、電車から良く見えたのは小沼だったように覚えている。

14時26分 森駅着

あの「いかめし」で、、というよりは「いかめし」だけで有名なのがこの森駅。
特急も止まるし、この辺では一番大きい駅だろうと期待していたが、
実際降りてみると、とても小さく寂しい駅だった。
流石に、駅前にはちょっとしたお店があるにはあるが、とても暇を潰せそうなところが無い。
如何せん、次の電車まで2時間半。何をして待っていればいいのやら、、、

まぁ、折角来たんだし、まずは「いかめし」食うべ、ってことで
「いかめし」を食おうとしたのだが、その「いかめし」も売っているのは
駅構内のちっぽけなキヨスクだけ。
「いかめし」っつったら、全国にその名を轟かす名物駅弁なんだから、
「森名物いかめし専門店」みたいな駅弁屋があってもよさそうなものだが、、、
で、キヨスクでいかめしを買ったが、思いのほか小さい。
今まで食べたことが無かったので知らなかったが、こんなに小さいとは思わなかった。
はっきり言って、一口サイズである。
味は、、、まぁ、特別美味しいって訳でもないが、
折角来たんだったら旅の思い出に食べてみるのも悪くないといった感じ。

いかめしを平らげても、まだまだ待ち時間が有り余っていたので、駅の周りを探索してみた。
この森駅、こうやって外に出てみて分かったのだが、かなり海に近い。
駅からちょっと離れた所に川が流れてて、そこの橋の上から海を見つめていた。
頭の上にはたくさんのかもめが飛び交っている。
東京の海じゃぁ、こんなにかもめはいないわな、、、と
感慨深くかもめの行き交う姿を眼で追いかけていた。

16時03分 森駅発

電車の中は相変わらず空いている。
地図帳を開きながら、今どこを通っているんだろう、
といった感じで辿りながら、暇を弄んでいた。

17時20分 長万部駅着

おしゃまんべ、、、そんなに大きい町ではないが、なぜか有名な地名。
やはりその読み名のインパクトから、人々の脳裏に焼き付くのであろうか?
待ち時間は約15分。そんなにのんびり出来る時間ではない。
そのままホームで次の電車を待ってても良かったのだが、折角だから降りて駅舎を見に行った。
やはりちっぽけな駅、、、大きさ的には森駅と同じくらいである。
まぁ、森も長万部も市ではなくて、町だからなぁ、、、

そして、次の電車に乗るためにホームへ向かった。
すると、ホームでおっさんが駅弁を売っている。
かにめし?、、、、じゅるっ。
思わず欲望に負けて、購入してしまった。
まぁ夕飯代わりにするか、ちと早いけど。

天気はかなりの曇り空で、ちょっと小雨もぱらついていた。
夜も近づいていたせいか、かなり辺りは暗かった。
ただでさえこんなに寒いのに、雨まで降ったら、今晩の泊りはどうすればいいんだろう?

17時34分 長万部駅発

電車の中で今先買ったかにめしを食べる。
そんなに、人が乗ってるわけでもなかったので、
周りの目を気にすること無く、ガツガツと食った。

さてと、、、昨日あんなに寒くて眠れない思いをしたが、
今日は雨も降ってるし、しかも昨日よりも寒い。
駅に泊まれれば良いが、昨日みたいに締め出されることも十分考えられる。
その日は日高本線で静内駅までが限度であることが、分かっていたので、
その辺にユースホステルでも無いものかと、地図帳やガイドブックを探してみた。
貧乏旅行のつもりではあるが、風邪なんてひいちゃ、たまったものじゃない。
ホテルよりはずっと安いんだし、今日はユースにしておこう、、、
すると、静内の一つ前の新冠というところに、ユースホステルがあるではないか。
もしかして、あいてないかもしれないが、後で電話してみよう、、、

で、かにめし食ったせいで、当然眠くなる、、、、

19時05分 東室蘭駅着

室蘭市の中心駅は室蘭駅なのだが、本線から外れたところにあるので、
札幌方面に向かう特急などは、代わりにこの東室蘭駅に停車する。
まぁ、私がそのとき乗ったのは鈍行なのだが、、、

さて、早速、新冠ユースホステルに電話で連絡をする。
すると、どうやらあいているようだ。
何でも、新冠駅まで車で迎えに来てくれるとのこと。
まぁ、一人でも歩いて行けないことはなさそうだったが、その好意に甘えることにした。
もう、外は真暗。でも、まだまだ電車の旅は続く。

19時40分 東室蘭駅発

20時41分 苫小牧駅着

王子製紙の工場があることでも有名な紙の町苫小牧。
どうせ、森や長万部よりちょっと大きい程度なんだろうと思っていたら、全然違った。
予想以上に大きくて奇麗な駅舎。
駅の外にもだだっ広い車道に、たくさんのタクシー。
苫小牧ってこんなに大きい町だったけ、、、

びっくりしたので、時間的にそんなに余裕があるわけではないが、
ちょっと辺りを散策してみることにした。
まず、駅とショッピングモールが繋がっていて、その雰囲気は都会的で奇麗な感じだった。
生憎、8時を過ぎていたためか、どの店も既に閉まってはいたが。
外に出てみてもあんまり人はいない。
車道も広くて、結構大きな建物もあるのに、人通りが殆ど無いのが不気味に思えた。
昨日の青森でも思ったが、地方都市は夜が早いので、夜一人で歩くのはどうも気持ち悪い。

21時16分 苫小牧駅発

日高本線、、、本線なのに一日7、8本程度。しかも、一両編成。
こりゃ、廃線になってもおかしくないな、、と思ったが、
鉄道好きの私としてはずっと残して欲しい路線の一つである。
今までずっと空いてる電車に乗ってきた私は、今回も空いているだろうと油断して、
発車ぎりぎりまで、苫小牧の駅の周りをウロチョロしていた。
で、いざ電車に向かうと、、、何と予想以上に込んでいるではないか。
座席は完全に埋まっていて、仕方なく立っていることにした。
しかしまぁ、乗客の8割方が高校生。だから、うるさいのなんの。
それにしても、新冠まで1時間半もあるのに、ずっと立ってかなきゃならないのだろうか、、、

ところが、次の鵡川駅で3〜4割が降りたので、あっさりと座ることが出来た。
で、流石に苫小牧から離れていくに連れて、乗客がどんどん減っていった。
途中かなりの時間寝ていたが、起きたときはもうガラガラといった感じだったのだ。
ただ、今までと違って、今回の行き先は終点では無いので、寝過ごすと大変である。
それでも、何とか新冠で降りることが出来た。

22時40分 新冠(にいかっぷ)駅着

外は既にもう真暗。駅舎も鍵がかかって、中に入れないようになっている。
さて、本当に迎えの車は来ているのだろうか、、、
ふと見ると、それらしきワゴン車が。
声をかけると、確かにユースホステルからの迎えの車のようだ。

明日の朝一の静内(しずない)発の電車に乗りたかったので、
運転手の人に、静内まで距離はどれくらいか聞いてみた。
すると、5キロ以上はあるとのこと、、、、
さすが北海道。隣の駅とは言え、東京とはまるで感覚が違う。
バスの時刻も聞くところによると、朝一でも7時過ぎらしい。
「明日、朝一の静内発の電車に乗りたいんですけど、大丈夫ですかねぇ」と聞いてみると、
「どうでしょうかねぇ?」と、そっけない返事。
「起こしましょうか。」とか「明朝は車で静内まで連れて行きましょうか。」とかいう
返事をちょっと期待していたものの、そんなに世の中甘くないのだろうか。

それにしても、道が真っ暗でどこをどう通っているのかすら、分からない。
やっぱ、車で迎えに来てもらって良かった。
都会のように、電灯が点っているわけではないのだ。

そうこうしているうちに、ユースホステルに辿り着いた。
料金は2500円くらい。う〜ん、安い。
どうやら、ここのYHは各部屋に「メジロマックィーン」とか「オグリキャップ」
とかいった馬の名前をつけているようだ。
さすが、正式名称をファンホースイン新冠というだけある。
オーナーの馬好きがこんなところからも伺える。
で、部屋を教えてもらったので、そっちのほうへ行くことにした。
2段ベッドが2つおいてある。まぁ、YHってこんなもんだろう。
それにしても、何と暖かい。暖房が入ってる、、8月だというのに。
ライダーらしき人が、「どこから来たんですか?」と声をかけてきたので、
「東京から電車で来ました。」というと、少し驚いている風だった。
ところで、ベッドを見てみると、どこも埋まっているっぽい。
あれ、、じゃぁ、俺はどこで寝りゃぁいいの?
フロントに言いに行ったら、どうやら手違いのようで、2階の別室に通された。

で、その別室の方は、布団が何枚か隅に畳んで置かれている和室だった。
6畳一間くらいの部屋に私一人。実際は、3人部屋位だろうか。
こちらは暖房とかが無いようで、少し寒いが、まぁ布団に入れば問題ないだろう。
それにしても、東京を出て2日。無計画ながら、よくこんなとこまで来たもんだ、我ながら、、、
今までの荷物を整理して、明日の計画を立てる。
5時に起きるのは辛いだろうか。でも、そうなると次の電車は3時間以上も空くし、、、
それから、風呂があるようなので今のうちに入っておこうか迷ったのだが、
ついつい不精な性格が祟って、そのまま寝てしまった。
(これが後で、後悔することとなるのであった、、、)

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