2001年11月25日(富山2日目)
朝は9時頃起床した。前日、8杯目をキャンセルしたせいか、睡眠時間も十分である。ささっと用意を済ませ、そのままホテルをチェックアウトして、9時半頃金沢発の北陸本線の上り列車に乗車した。目指すは富山県最東端、朝日町の中心駅である泊駅。今日は昨日と逆に東から攻めて行くとい寸法だ。

電車に揺られること約40分。泊駅に到着だ。東の方を見れば、飛騨山脈が海岸まで迫っている様子がよく分かる。その向こうは新潟県との県境、および天下の名勝「親不知」がある。うーーん、天気も良いし、景色も良いし、絶好のラーメン日和だ。

さて、本日の標的1軒目は「五叉路(ごさろ)」。県東屈指の名店だ。11時開店なのだが、まだ時間は10時20分くらい。まぁ、ゆっくりと歩きながら探して行こう。。。店名通り、5つの道が交差するところにあるらしい。ところが、その交差点はすぐ分かったのだが、地図で書かれていた辺りに肝心のお店が見つからない。結局、11時も近づいてきたので、断念して地元の人に聞いてみた。そして、教えてもらった通りの場所に行けば、「五叉路」という看板が。。。本でみた店の写真に比べ、全然新しいお店になっているではないか。なるほど、新装開店したんだな。綺麗で広めの店内。地元のファミリー客に愛されている様子が何となく分かるようだ。ここでは、半ラーメンがあったので、後々のことを考え半ラーメンに。

さて、次の標的は魚津市の「やまや」。「五叉路(ごさろ)」もそうだが、この「やまや」はまさに県東の横綱級の有名店だ。泊駅で30分ほどの電車待ちの後、下り列車で魚津駅へ。駅前に何故か「美味しい水」と書かれた湧き水コーナーがある。美味しそうだなぁと思いつつも、臆病な私はちょっと止めておいた。

さて、地図をたどりながら徒歩で「やまや」へ。最寄り駅は富山地方電鉄(地電)の電鉄魚津なのだが、ダイヤがあわなかったため、JR魚津駅から20分くらい歩くことに。まぁ、道に迷うこともなく、無事に「やまや」へ到着。小川沿いにひっそりと佇む、知らない人は見過ごしてしまいそうな小さなお店だ。。。しかし、中に入ってびっくり。運良く並ばずには済んだものの、お客さんで一杯ではないか。さすが、屈指の有名店だけある。それにしても、老舗という言葉がピッタリの店内だ。ホント、重要文化財に勝手に指定したいくらいです(笑)。ここでは、迷った挙げ句ワンタンメンを注文。しばらく待って出てきたラーメンは、塩ラーメンと見間違うほどの透き通った薄口醤油ラーメン。しかも、これが激ウマ。ホントに口の中に旨味が広がるという感じだ。麺も手打ちでシコシコだし、ワンタンもちゅるっと快感。大満足のまま店を後に。

「やまや」で感動したのも束の間、JR魚津駅(地電新魚津駅)への電車の時間が迫っているので、急いで電鉄魚津駅へ。地図通り駅まで行って、ギリギリ間に合った!、、、と思いきや、駅舎が閉鎖されているではないか!!!。一体どこから乗れば良いんだぁ〜??? かくして迷っていると、上を通る線路から「まもなく電車が参ります〜」の声が、、、。きっと、臨時駅舎か新しい駅舎がどこかにあるはずなのだが、結局見つけることが出来ずに電車をやり過ごしてしまった。とはいっても、JR魚津駅まで歩いても20分くらいだし、次のJR魚津発の電車まであと30分以上あるので、そのまま魚津駅に向かって歩くことにした。そのまま魚津駅で電車に乗って、富山駅へ。

富山駅に戻ったときには、もう既に14時を回っていた。次の標的は「大喜本店」。本にはよく根塚店が乗っているが、ネットで本店の場所を突き止めることに成功したので、本店に行くことにした。富山駅前から路面電車に乗って「西町」で下車。徒歩5分くらい、富山市の中心部のちょっと裏通りに、その「大喜」の本店はあった。しかし、この店、店名の暖簾はあるものの、ラーメンとか中華そばとかの文字が見あたらない。よく目を凝らしてみれば、陣笠に中華そばと書いたものがあったが、これは気づきにくい。しかしながら、店内はこの時間だというのに、人で一杯。レトロな店内に目を配りつつも、中華そばの小を注文。これぞ、まさに富山スタンダードの濃口醤油ラーメンだ。

「大喜」の次は「末弘軒」。柳の下の愛称で有名な富山市内では知らない人は居ないほどの有名店だ。店構えは老舗らしからぬ綺麗な感じだが、看板に書かれた創業70年の文字はやはり説得力がある。店内のメニュー表の裏側に、末弘軒の変遷の様子が写真付きで説明されていた。アシタバとモロヘイヤを練り込んだアシタモ麺なる麺もあるらしい。気にはなったが、流石に普通の中華そば(ミニ)を注文。佐野ラーメン風の手打ち麺はちゅるりと喉越しの良いものだった。

既に4杯を平らげたのだが、そのうち2つがミニラーメンであったせいか、さほど腹に応えてはいなかったので、次の標的「南京千両」に向かうことにした。結構距離はあるのだが、腹ごなしも兼ねて歩くことにした。途中、ベンチを見つけたので、駐禁のステッカーを貼っているお巡りさんを横目に、座って一休み。それまでのメモを取り終えて、再び歩くことに。

「南京千両」。九州で初めてラーメンを出した久留米の屋台と同じ名前だ。久留米の南京千両と何らかの関係があるかどうかは知らないが、ラーメン好きとしては気になる名前である。何でもこの「南京千両」は富山で初めての九州ラーメン店だそうだ。確かに、外見も内装も、老舗らしさを感じさせるものだった。ワンタンメンが有名だそうだが、注文は普通にラーメン。白くてサラリとしたスープは、初めはイマイチ美味しいと思わなかったが、飲んでいくに連れて、豚骨の旨味とコクが感じられるようになる、加速度的に美味しいラーメンだった。

「南京千両」で5杯目を食べて、流石にお腹も膨れた。ひとまずは、どこかで休憩しようと思い、近くの地電の不二越駅へ。ところがこの駅、予想以上にサビれている。。。駅舎に至っては、戦後からずっと改装してないのではないか?と疑ってしまいたくなるほど古くサビついている。駅員室みたいな部屋があるのだが、カーテンで覆われていて、中には誰もいなさそう。無人駅になってしまったんだろうと思ったが、よく見れば平日の朝6時50分から8時50分までは駅員がいるそうだ。。。しかしまぁ、一日2時間しか駅員がいないんだったら、無人駅とさして変わりはないんじゃないか?。まぁでも、ラーメン好きの性だろうか、こんな古びた建物には妙な愛着を感じてしまう。これまた、古びた木製のベンチに腰掛け、メモを取ったり、携帯でメールを飛ばしたりと、1〜2時間くらいゆっくりと過ごさせてもらった。

次の標的は「富公」。実は「九頭龍」が不二越駅のすぐ近くにあるのだが、夜の2時まで開店しているため、とりあえずは後回しに。さて、この「富公」、本来は行く予定ではなかったのだが、余裕が出来たので行くことに。そういう訳で、あまり期待はしていなかったのだが、これが意外に当たり。魚介ダシが口一杯に広がり、とても豊かな味だった。店の雰囲気も家庭的で良い感じだったし、来て良かったと思った。

さて、6杯目を片づけ、すでに辺りは陽も暮れて来た。次の標的はコッテリ豚骨の「じゃん鬼」。地図を見たところ、「じゃん鬼」まで地電の東新庄駅から2キロくらい。バスは分かりにくそうだったのと、地電に乗ってみたかったこと、および歩いてお腹を空かせたかったこともあり、東新庄駅から歩くコースを選択した。まずは、不二越駅から富山行きの地電に乗り、次の稲荷町で乗り換え。この稲荷町駅もまた、ノスタルジックな駅だった。ここで黒部方面行きの電車に乗り換えて東新庄駅へはすぐだった。東新庄駅、ここは無人駅ではないものの、70過ぎの駅員さんが一人いるだけ。不二越駅や稲荷町駅と同様、駅舎は古く、まさにノスタルジック。今は昭和40年?と疑りたくなってしまうほどの渋さだ。少し時間に余裕があったので、駅舎のベンチに座ってのんびりしてると、駅員さんが電車が来ても乗ろうとしない私を見て、「富山行きが行っちゃうよ」と声をかけてきた。「ちょっと休ませてもらってるだけですから。」と一言返しつつも、あんまり長居をするのも何なんで、とりあえず「じゃん鬼」に向かって、歩くことにした。

東新庄駅から歩くこと、20〜30分。ようやく、「じゃん鬼」に到着。流石にこれだけ歩くと疲れるが、バスの本数もこの時間は殆ど無いので、歩くしかない。周りに何もなく、道路に面した広い駐車場の奥にあるこの店に歩いて来たのは、恐らく私だけであろう。この店、とにかく客層が若い。クリーミーな豚骨スープを売りにしている店なだけあって、若者向きといったところであろうか。麺も日本で2軒しかない天然鹹水を使ったものらしい。ちなみに、もう一軒は神奈川の店とだけ書いてあったが、どこだろう?藤沢の「しなそばや」かな?何はともあれ、白鬼というラーメンを食べた私は、再び歩いて東新庄駅に向かうことに。何故か帰りは行きより早く着いてしまうような気がする。何故だろう?気持ちの問題なのかな?

すでに時計は9時を回っていた。今日の予定は後は「九頭龍」のみだが、京都に帰る電車の時刻が午前2時17分。胃袋次第では、9杯目も行けてしまうかもしれない、、、。いずれにせよ、のんびりと回って行こう。さて、「九頭龍」は先程時間を潰した不二越駅のすぐそば。同じルートを逆に辿れば良いわけだ。しかし、ローカル鉄道だけあってか、本数がやたら少ない。ほんの数キロの距離なのに、電車待ちが20分、乗り換え待ちが30分といった具合で、不二越駅に着いたときは10時を回っていた。まぁ、待ち時間が長かったとはいえ、ローカルな駅舎でのんびりと佇めて、それなりに楽しい時間を過ごしたが。

8番目の標的は「九頭龍」。これまた、富山を代表する名店で、しかも席数が日本一らしい。相当広い店内を予想していたのだが、驚くほどの広さという訳でもなく、席と席の間をかなり詰めているというだけのような気が、、、。まぁ、これだけ席があると、待たされることはまず無さそう。とはいっても、店内は多くの客で賑わっている。さすが、富山に九頭龍ありといったところだ。

九頭龍でラーメンを食べた後、再び不二越駅へ。ホームレスらしき初老の男性が二人いた。ガラス戸を閉めると多少は寒さを凌げるみたいだし、野宿にはなかなかの場所なのかもしれない。時計は22時半を回っていたが、富山行きの最終便が22時48分。とりあえず、富山駅に戻ろう。ホームで待っていると、ガタガタと摩擦音を鳴らしながら古い型のワンマンカーが到着。やはり、この時間は空いている、、、と思ってよくよく見てみれば、何と自分一人だけ。数分間、貸切状態を堪能し、電鉄富山駅に到着。電鉄富山駅構内には、昔を偲ぶ展示物とかが飾られていたが、ゆっくり観る暇を与えてもらえなかった。この電車が電鉄富山駅に着く最終列車らしく、私が降りたら駅のシャッターを閉める手はずになってたからだ。しぶしぶ、駅を出てJR富山駅のみどりの窓口に向かい、まだ買ってなかった急行券を買った。

さて、時間はまだ23時くらい。電車が来るまで3時間ほどある。しかも、駅の待合室は締め切られ、暖を凌げる場所もなく、どうして良いものやら。一軒ほど、この時間でもやっているラーメン店をチェックしているのだが、そこまで約3キロ。東新庄駅と「じゃん鬼」との往復で、相当足を疲れさせてしまったので、歩くのはしんどいが、かといって路面電車もバスも走ってないし、タクシーは金がかかる。結局、少し駅で座り込んで休んだ後、再び歩くことにした。

9軒めの標的は「虎矢」。「じゃん鬼」の店主が修行した店でもあるらしい。しかし、この状態で3キロ歩くのは結構辛い。今まで既に10キロ近く歩いてるのに、これから往復6キロってことだ。じゃぁ、漫画喫茶かどっかで時間を潰せば良いのに、時間と胃袋の余裕があればラーメンの方を選んでしまうこの悲しき性。結局、寂しさを紛らわすために、電話をしながら歩くことにした。

30分以上歩くこと、途中小雨に降られながらも、ようやく「虎矢」に到着。結構賑わっている。流石にこの時間だけあって、若い人ばかりだが。この店には、清湯系醤油味の「小虎」と白湯系の「中虎」の2種類があるのだが、メニューの順番的に「小虎」の方を選んだ。「小虎」は横浜の味みたいな触れ込みだったが、実際は典型的な富山系濃口醤油味。それなりに美味しかったので、来た甲斐はあったかな。本棚にゴルゴが置いてあったので、読もうかと思ったが、結局食べたらすぐに店を出た。

帰りも同じ道をテクテクと歩く。雨は降ったり止んだりという中途半端な状態だったが、駅に着くころには殆ど止んでいた。コンビニでホットミルクティーを買って、ひとまず暖を取り、駅に戻った頃には1時半を過ぎていた。そのまま駅で電話をしたりメモ書きをしたりしながら電車を待つ。乗る予定の電車は、大阪行きの急行「きたぐに」号。寝台の他に自由席が連結されているので、そちらの方で座って帰ることに。そこそこ空いていたので、そのまま座って寝た。こうして、今回の富山ラーメン旅行は終了したのだった。