京都ラーメン考
〜京都ラーメンの特徴と独自性〜
京都ラーメンは存在するのか?
博多や札幌と言えば、ラーメンをすぐに連想する人も多いでしょう。
しかし、京都と聞いてまずラーメンを連想する人はあまりいないのではないでしょうか。
京都と言えば、懐石料理や和菓子といった日本古来の食文化が有名で、
ほんの数十年前ころから広まった大衆食のラーメンは似つかわしくないかもしれません。
ところが、実はこの古都京都には確かに京都ラーメンと名乗るに
恥ずかしくないだけのラーメン文化が存在するのです。
まずその根拠の一つとして、意外なほどラーメン屋さんが多いということが挙げられます。
特に左京区の一乗寺周辺は、関西でも有数のラーメン激戦区で、多くのお店が味を競っています。
ですが、ラーメン屋が多いというだけでは、京都ラーメンと名乗れるだけの説得力はありません。
それにラーメン屋の多さなら、大阪や神戸だって決して負けてはいません。
京都ラーメンを名乗るべきもう一つの根拠として、京都以外の地ではあまり見られない
独特の特徴を京都のラーメンが持っているということが挙げられます。
その特徴自体は次節以降で詳しく述べますが、これらの特徴のいくつかは京都でしか見られません。
それに、これらの特徴的なラーメンを産み出した草分け的なラーメン店が、
古くから京都に存在していたことも忘れてはならないでしょう。
実際、たかばしに本店のある新福菜館は、関西でも5本の指に入るくらいの
古参のラーメン店と言われています。
これらの理由からしても、やはり京都は和歌山と並ぶ
関西のご当地ラーメン処と言って差し支え無いでしょう。
ただ、和歌山ラーメンが一世を風靡したのに対し、未だ京都ラーメンが全国的に
有名になったことが無いのは、京都に住む私としても残念なことです。
一昔の喜多方や佐野、最近の和歌山や徳島が、行政ぐるみでラーメン町おこしをして、
ある程度の成功を収めたのですが、京都は世界的観光都市であるため、
ラーメンで町おこしをする必要が無いというのが
京都ラーメンという名前が全国的に広まらない理由の一つなのかもしれません。
ただ、観光客には知られていないとしても、地元の人々に愛されながら、
京都のラーメン文化は密やかに21世紀へと受け継がれていくことになるでしょう。
京都ラーメン五大流派
京都のラーメンはスープで大きく分けて以下の5パターンに分かれると思われます。
1.濁るまで強く煮出した鶏がらメインのスープに豚の背脂をふりかけたもの。(ますたに、珍遊、笑麺)
2.鶏がらと野菜を白くドロドロになるまで煮込んだもの。(天下一品、悟空、名門)
3.東京ラーメンのように澄んではいないが、比較的あっさりめの醤油味。(第一旭、ラーメン藤、大栄ラーメン)
4.豚骨がメインのコッテリ風味だが、鶏がらで味にアクセントを付けているもの。(横綱、高安、たく味)
5.濃口醤油を用いてスープを真っ黒にしたもの。(新福菜館、華門)
勿論、中間のパターンや、これだけでは分類できないパターンのお店もあります。
東京の方では、天一が進出していたり、ラー博に新福が出店しているせいか、
京都のラーメンは、2、5のパターンと思われがちですが、
実際に一番多いのは、1、3のパターンのようです。
こってり系鶏がら出汁
上に述べたうち3番以外の4つのパターンには、見た目は多少違いますが、
大きな共通点があります。それは、出汁に鶏がらを、それもかなりの量を使ってるということです。
勿論、第一旭のように豚骨だけを使ってる店もあるのですが、
やはり多くの店では鶏がらを何らかの形で使っています。
とはいっても、東京ラーメンのように軽く鶏がらを煮出すのではなく、
鶏臭くなるくらいまで強く煮出すため、こってりとした濁ったスープが出来あがるのです。
いずれにせよ、全国的に見てもこれだけ鶏がらを表に出した
スープを用いる地方は珍しいようです。
京風ラーメンと京都ラーメンは全くの別物
昔、一世を風靡した京風ラーメンというのがあります。
じつは、この京風ラーメン、京都ラーメンとは全くの別物なんですね。
京風ラーメンのお店といえば、ラーメンとあんみつのセットメニューなどがあって、
内装外装共に和風のキレイなたたずまい。
当然お客さんの殆どが女性で、私のような野郎が一人で入ると浮いてしまいます。
しかも、京風ラーメンのお店は、当の京都ではあんまり見られないんですよね。
で、ラーメンの方はというと、京都ラーメンとは似ても似つかぬ
あっさりと透き通った可もなく不可もないお味なんですが、
自分で出汁を取ってるお店は少なく、大抵は業務用スープを使っていて、
その分メニューや女の子受けする雰囲気作りに努めているようです。
麺はストレート、太さは中くらい、加水率はやや低め
麺については、中くらいの太さで、ストレートなものが大半を占めてるようです。
まぁ、太さに関しては多少のばらつきはあるものの、
縮れ麺はまず見られないと言って良いでしょう。
実際、ストレート麺を使うというのは、京都に限らず関西及び西日本全般的な特徴で、
逆に東北や北海道などでは、殆どのお店で縮れ麺が使われています。
また、加水率(小麦に対する水の比率)が低めの麺がよく使われているようです。
プリプリ感よりはむしろシコシコ感の方を京都人は好むのかもしれません。
ネギは九条ネギを用い、入れ放題の店もある
京都ラーメンの特徴の一つとしてよく挙げられるのが、この九条ネギです。
一口にネギと言っても、西と東ではこれまた違っていて、
関東では茎の部分を主に使った白ネギがメインで、
一方、九州地方では、細くて青い葉ネギ、いわゆる万能ネギがメインのようです。
でもって、ここ京都のネギは何かと言うと、上述の2つとは違う九条ネギというもので、
色的には青いので万能ネギに近いのですが、太さ的には白ネギに近いです。
京都のラーメン店では殆どのお店でこの九条ネギが用いられていて、
店によっては、カウンター上に金ザルに入れたまま置かれていて、
好きなだけラーメンに入れることが出来たりもします。
そうじゃない店でも、ネギ多目オプションは基本的にタダのことが多いです。
サイドメニューにカラ揚げやヤキメシがあるお店が多い
何故か京都のラーメン屋さんには、から揚げがサイドメニューに置いて
あることが多いです。これは他のご当地ラーメンには見られない
特徴だと思われるんですが、実際のところどうなんでしょう。
元祖カラ揚げの暖簾を掲げてるところから、「金ちゃん」が初めて
ラーメンにから揚げをセットにすることを考え付いたのかもしれません。
あと、ヤキメシがサイドメニューに置かれてるのは、他の地方でも珍しくはないんですが、
東京などではヤキメシとは言わず、チャーハンと言うのが一般的なんですよね。
ところが、京都のラーメン屋さんでチャーハンとメニューに書かれてるのは
殆ど見たことがありません。京都ではヤキメシが一般的のようです。
唐辛子系の調味料が好まれる
ラーメン屋に置いてある調味料といってまず思い出すのが胡椒でしょう。
京都のラーメン店にも殆どのお店で胡椒が置いています。
しかし、胡椒だけでなく、一味唐辛子か辛子味噌が必ずといってよいほど、
どこのお店にも置かれています。関東や九州では辛子系の調味料が
置かれているお店は比較的少ないのです。
ただ、博多系の豚骨スープや東京系の清湯系スープには、
唐辛子はあまり合わないのに対し、京都のコッテリ鶏がら系のスープに唐辛子は
よく合う(と思う)ので、味の変化を楽しむために個人的にはよく唐辛子を入れています。
学割の効くお店が多い
映画館や電車などで学割があるのは珍しくないですが、
ラーメン屋さんで学割があるのは一般的には結構珍しいことだと言えましょう。
ところが、京都のラーメン屋さんでは、学割の効くお店をときどき見かけます。
まぁ、向こうも商売だから、そんなに安くはならないですが、
それでも50円〜100円くらいは割り引いてくれます。
やはり、京都といえば学生の街と言われるだけあって、
街全体が学生を住み易くしてあげようという雰囲気があるからなんでしょう。
実際、ラーメン屋さんに限らず、普通の食堂などでも学割のあるお店は珍しくありません。
普通のラーメンを頼むときは、「並!」と言えばよい
東京でラーメンを頼むときは、普通に「ラーメン!」と言います。
和歌山などでは、「中華!」とか言って注文するのが一般的のようです。
それに対して、京都では「並!」と言えば、普通のラーメンが出てきます。
というのも、京都ではメニューに普通盛りのラーメンを「ラーメン(並)」などと書くことが多いからです。
それに対し、東京の場合は普通盛りのラーメンは、ただ「ラーメン」書かれてるお店が多く、
ラーメン店で「並」という言葉はあまり使われてなかったと記憶しています。
文字数から言っても、「なみ」はたった2文字だし、そういう意味では、ラーメンや中華に比べて
消費するエネルギーも少なく効率的と言えるかもしれません。
古くからのお店や無骨な感じのお店が多い
京都で、本に載るような人気の高いラーメン店の多くが、
開業してから十年近く、もしくはそれ以上経つお店です。
店の栄枯盛衰が比較的少なく、そういう意味では
新店が育ちにくい土地柄と言えるのかもしれません。
勿論、「東龍」、「高安」、「杉千代」等々、人気のある新店が出てきているのも事実ですが、
やはり東京などに比べると、新店が出来るペースは遅いです。
また、女性客を意識したおしゃれでキレイなお店が少ない
(京風ラーメンを除く)のも、特徴として挙げられます。
東京では、最近は若い女性が一人でラーメンを食べているという姿は
珍しくはないのですが、京都ではなかなか見られません。
美味しいチェーン店が多い
ラーメンでチェーン店と言えば、これといって美味しいお店は少なく、
むしろメニューの数やファミレス的な雰囲気で客を集めるところが多いと言われます。
ところが、京都のチェーン店は結構、というかかなり美味しかったりするんですよね。
特に天下一品や横綱などは、チェーン店ながら、かなりレベルの高いラーメンを食べさせてくれます。
これらのお店と一般的なチェーン店の違いとして挙げられるのが、創始者の差でしょう。
一般的なチェーン店の場合、創始者がラーメン店を営んでたケースはまれで、
いわゆる背広を着たビジネスマンが、ラーメンを外食産業として捕らえ、
一儲けしようと始めからチェーン目的でお店を展開したパターンが多いようです。
それに対し、天下一品や横綱、金ちゃん等のチェーン店は、元々一つの小さな屋台から
始まったお店であり、創始者が試行錯誤して作り上げたスープを売りにしているから、
おのずとレベルの高いラーメンが食べられるといえるのではないでしょうか。
屋台から始めたお店が多い
先ほど述べた天下一品、横綱、金ちゃんもそうですが、他にますたにや山さんラーメン等、
京都のラーメン店には屋台から初めて店を持ったパターンが多いようです。
まぁ、これは古いお店が多いということの裏返しでもあるかもしれません。
実際、最近出来たラーメン店は始めから店舗で営業することが多いようです。
誇大広告が多い
むしろこれは京都よりも大阪の方が多いのかもしれませんが、
関西のラーメン店の特徴の一つとして、日本一ウマイ!とか、
通の味!とか、そういう誇大広告が多いような気がします。
それから、超大盛りラーメンを20分以内に食えばタダとか言った
大食いチャレンジのお店も関西の方が多いようです。
関東人は控えめで、関西人はノリが良いからなのでしょうか。